中國紀行 CKRM Vol.23
世界の歴史のなかでも、江戸時代は実に特別な時代でした。長く「天下泰平」が続いたことでも有名ですが、それは東洋の文化圏に育まれた数千年の叡智の結晶であり、徳川家康が完成に導いた東洋の理想郷と言っても良いかもしれません。
「サムライ」が支配した武家社会の最終形態でもありましたが、民衆文化が多く生まれたことも特筆すべきことでしょう。陶磁器、茶、本草(漢方)、発酵食品、有機農法のような生活に紐づく文化の広まりには、それを広める人、商人の存在が重要でした。
いわゆる「鎖国」の状態であっても、中国やオランダ、アイヌ、琉球國などとの結びつきは貿易によって保たれ、相互交流も盛んであったことが文化の活性化につながったのです。とりわけ明代までの中国文化が、日本社会に根付いていた文化と融合したことも大きな要因でしょう。前々号の琉球國特集、前号のアイヌ特集から続く今回の特集を読んで頂くと、その意味が強く感じられるはずです。また、今号のタイトル「龍ノ遺産」の意味ですが、融合文化の象徴として、江戸時代の寺院に見られる「龍」に着目しました。
なぜこの時代、多くの龍が描かれ、今も龍が好きな人が多いのか···。中國紀行CKRM的視点で、おもに江戸時代の始まりのころとその終焉にもスポットをあて、当時の人たちの心に想いを馳せてみました。